1. 対象物件の概要 |
■ 敷地概要
- 敷地面積 約1000u
- 買収面積 約80u
- 残地面積 約920u
- 買収される割合 約8%
- 幹線道路に面する郊外地
- 建築基準法の用途地域制限 市街化調整区域
- 西側に隣接する敷地は、本件建物所有者の自宅の敷地となっている。
■建物概要
- A棟 鉄骨造平家建店舗 延床面積 200u
建物は、従業員が使用する事務室や休憩室、また主に一般車両の車検や修理等を行う整備室、そして来客用待合室・便所等として利用されている
- B棟 鉄骨造平家建作業場 延床面積 50u
建物は、車両整備室として使用され、主に洗車後の車内清掃等に利用されている。
■スタンド機器設備の概要
- 給油方式 : アイランド型(地上固定式タイプ)。
- 計量器 :
- (A・B) レギュラー・ハイオク 主に普通車への給油
(大型車への給油は不可能)
- (C) レギュラー・軽油 主に大型車への給油
- (D) 灯 油
- 危険物貯蔵タンク : 4基 (地下コンクリート造タンク室に設置)
■消防法上の概要
- 取扱所の区分 … 営業用自動車給油取扱所
- 取扱所の構造 … 屋外型 (危険物の規制に関する規則第25条の6)【※】
- 上屋面積 … 現況面積 220u (約28%)、許容面積 230u (30%)
■支障状況
- 敷地東側の公道沿い巾約1.5mが支障となり、植込花だん・オイルトラップ等の工作物が対象となる。
- 計量機Cにて大型車が給油する際に後部荷台が敷地より、はみ出てしまう。
- 上屋面積の割合 : 現況 約28% ・ 買収後 約32%
【※】 : 上屋(キャノピーや建物の庇などの上空を遮るもの)の面積が、敷地面積の3割を超えると屋内型の扱いとなります。屋内型は、建物を耐火構造としなければならない事や、原則として敷地の二方向を開放しなければならない事など、屋外型と比べ、より厳しく規制されています。建築費も大きいことから、郊外に位置するガソリンスタンドは、屋外型が多く見受けられます。
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2. 検討のポイント |
- 二棟の建物及びキャノピー(給油スペース上部の屋根)は、直接の支障となっていないこと。
- ガソリンスタンド特有の機器である計量機や地下タンク等についても、直接の支障となっていないこと。
- 買収後において消防法上、屋内給油取扱所の扱いとなり、不適合となること。
- 計量機Cの給油において、安全上、大型車両の停車位置に問題があること。
- 隣接する西側の敷地が、自宅敷地であること。
計量機及び洗車機・地下タンクと道路境界線との保安距離の規制がありますが、本件においてはその問題が生じないため割愛させて頂きます。「危険物の規制に関する政令第17条の規制関係」
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3. 考えられる案 |
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<第一案> キャノピーの一部を除却する案 |
屋外型として適合するように、図に示す斜線部を除却する案です。
斜線部の直下は何も設置されておらず、車両及び従業員の通路として使用されています。また除却範囲は、現況の軒先より約1mです。この範囲が営業上の収益に少なからず影響を及ぼすとは考えにくいです。
計量機Cの大型車停止位置の安全は、次のように確保します。
柱があるアイランドA及びCの位置はそのままにし、計量機同士の位置替えをします。現況の給油車両のゾーニングは、右側の大型車対応のAゾーンと、左側の大型車未対応のBゾーン普通車部分とに分けられています。この左右を反転すると、大型車両の停止位置が左側へ延長します。すると、後部荷台部分が計画線を超える事はありません。
なお、給油方式を、ノンスペース型式(懸垂式タイプ)とする案も考えられますが、計量機及び配管の全面改造が必要になるため、営業休止期間が長期となってしまいます。 |
■ 利 点
■ 問題点
- キャノピーの一部を除却する必要があります。
- 軽油の配管を布設し直す必要があります。
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次の案は、キャノピーを除却することのない案を考えます
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<第二案> 建物及びキャノピーを全面改造する案 |
屋内型として適合するように、建物を耐火構造とします。建物及びキャノピーの面積規模は、現況と変わりません。
■ 利 点
■ 問題点
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<第三案> 隣接する敷地を移転先地とする案 |
建物及びキャノピーが現況のまま、屋外型として適合するように、隣接する西側の敷地の一部を移転先地とします。買収部分に相当する面積の土地を確保する事で、屋外型として適合できます。
■ 利 点
■ 問題点
- 支障となっていない自宅建物を、関連移転しなければなりません。
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4. まとめ |
本件は、第一案が採用となりました。判断の要因は、営業休止期間です。
第二案は機能的に、より合理的ですが、長期間に及ぶ営業休止とのバランスを欠く事になります。営業休止に伴う損失補償として営業補償がありますが、営業体の目的は収益を継続して得る事であります。確かに収益が得られない分を金銭で補償すれば良いとも考えられますが、移転の方法と休止期間とのバランスが必要です。
採用となった「キャノピーの一部除却」についてですが、建物の移転方法は、原則として従前の価値及び機能を失わない方法とされています。しかし、「その一部分を除却しても従前の機能に、ほとんど影響を与えないと認められる場合(基準細則第15)」は、除却工法を認定する事とされています。本件においても、考えられる機能回復の案を提起する事で、除却工法を決定づけております。
第三案については、自宅建物を移転する必要があります。当該ガソリンスタンドと隣接する自宅は、各々独立して存在している敷地であり、有形的・機能的・法制的に均衡が保たれております。
ガソリンスタンドの移転補償における検討は、今回のように、@消防法上の上屋面積の割合と、A車両(顧客用・営業用・タンクローリー)の軌跡及び停車位置が大きなポイントとなります。特にこの二点に重点をおき現地調査へ赴く事が、交渉の早期締結につながるものと、考えております。 |
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