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FileNo. 018
 
 公共事業の施行に伴う損失補償は、私人の財産権に対する損失の補償と、道路、河川施設、学校等の公共施設等に対する損失の補償に区分されます。通常、前者は一般補償、後者を公共補償といわれています。今回の事例は区画整理事業地内に在する、交番の移転補償を行ったケースです。



1. 対象物件の概要


 交番は交代で番をするところといわれるように、原則として、担当警察官の交代勤務により、警察官が24時間常駐し、周辺地域の治安の維持と住民の利便を図ることが目的とされています。

従前地の状況
  • 構造 RC造平家建事務所(交番)
  • 延床面積 42u
  • 建築面積 45u 
  • 敷地面積 239u
  • 敷地の状況 間口10m,奥行24mの長方形
    パトカー1台,巡回バイク2台


仮換地の状況
  • 構造 RC造平家建事務所(交番)
  • 延床面積 42u
  • 建築面積 45u
  • 敷地面積 194u 減歩18%
  • 敷地の状況  間口13m,奥行18mの台形
    パトカー1台,巡回バイク2台
    (建物・車保管場所共に再現可能)


仮換地図

2. 公共補償について
 
 公共施設は、その公共性から機能を廃止したり中断することはできません。そのため、
私人の財産権の補填を原理とする一般補償とは別の基準で処理することが適切であると
定められています。(公共事業の施行に伴う公共補償基準要綱・昭和42年2月21日閣議決定)
いわば、この交番が今回の区画整理事業により、休業することがあってはならない訳です。

3. 検討のポイント

  1. 支障となる建物は交番であり公共施設であること。
  2. その施設の特性から中断が伴わない移転工法であること。
  3. 従前地と仮換地先が重複していること。
  4. 従前地と仮換地はレベル差(高低差)はなく、造成工事は生じないこと。

4. 公共補償の基本的な考え(主なものを抜粋)

  • 金銭補償をもってするものとする。 (第四条)
    (ケースにより、合理的と認められる場合は現物補償も可能)
  • 施設の機能回復は同種施設とする。 (第六条)
  • 建設費は財産価値の減耗分を控除した額で補償するものとする。 (第八条)
  • 補償額が一般補償基準に満たない場合は、一般補償とする。(第十四条)

5. 考えられる案
<第一案>再築工法

 従前地と重なりのない仮換地先の北側に建物を再築する案です。

■利点
  • 建築後の移転が可能なため直接移転ができる。
  • 従前と同種の建物の配置であるため、機能回復が図れる。
  • 動産等の移転は生じるが、公務に著しい影響が及ぶことはない。
■問題点
  • 特になし。



<第二案>曳家工法
 再配置する位置は第一案(再築工法)と同じですが、移転方法を曳家工法とする案です。

■利点
  • 従前と同じ建物であるため、その機能に変化が生じない。
  • 建物移転料は再築工法に比較し、経済的である。
■問題点
  • 移転期間は建物の利用が出来ないため、その機能に見合う仮施設が必要となる。
  • 仮施設とはいえ、交番の機能を満たすための施設であるため設置費用は高額となる。
  • 仮施設を設ける、土地(保留地等)が必要となる。


 以上の、2案を比較し、さらに一般補償との経済比較を行うと下表のようになります。

6. まとめ

 以上、2案を費用比較の結果、曳家工法が高額となります。公共補償は経済性のみならず、移転の方法が重要です。仮施設を設け、移転を2度行わなければならない曳家工法より、直接移転が可能な再築工法がより合理的であります。よって、本件は経済的合理性も加味し、第一案の再築工法が採用案となりました。
 さらに、一般補償との経済比較をした結果、補償額が一般補償額に満たないため補償額は一般補償の基準となりました。

 なお、本件を検討するにあたっては、この区画整理事業地内において、仮換地先と従前地の土地の重複利用が認められたこと、仮設による交番の運営が可能であったこと(所轄の県警に確認)を前提に検討を行いました。この条件は各区画整理事務所、各県の警察署により異なることがありますので十分な注意が必要となります。


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