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FileNo. 020
 
 今回の事例は、複数の建物が存する敷地の中央を新設道路が縦断する用地買収で、一団の土地が分断されてしまうケースです。



1. 対象物件の概要


■ 敷地概要
  • 敷地面積 1,730u
  • 買収面積  450u
  • 残地面積 1,280u(残地A 390u / 残地B 890u)
  • 取得割合 26%
  • 建築基準法の用途地域制限   
    第1種低層住居専用地域
  • 建築基準法の建築制限
     建ぺい率 : 40%
     容積率   : 80%
     防火指定 : なし

■ 建物概要
 
  構造・階数 用 途 建築面積 延床面積 建築年月
A棟 木造2階建 専用住宅 145u 170u 昭和42年4月
B棟 木造平家建 倉庫 11u 11u 昭和42年4月
C棟 木造2階建 共同住宅 125u 250u 平成3年5月
D棟 木造2階建 共同住宅 42u 82u 平成5年8月
    323u 513u  
 
  • A棟は所有者の住居として利用され、B棟は附属家の倉庫です。
  • C・D棟は共同住宅として利用され、C棟は6世帯、D棟は4世帯の入居が可能です。また、共同住宅には各世帯1台分の自動車保管場所が確保されています。

2. 検討のポイント

  1. 当事業により一団の土地が分断されること。
  2. 嵩上げ式道路のため宅地と道路との高低差が生じること。(最大1.8m)
  3. 東側のA・B棟は直接支障とならないこと。
  4. 支障となるC・D棟は共同住宅であり、A・B棟の自宅とは関連性がないこと。

3. 考えられる案
<第一案>構内再築(C・D棟集約)
 A・B棟は直接支障にならないため移転対象外とし、事後に生じる高低差は階段、
スロープ等残地工事にて機能回復を図ることとします。
直接支障となる2棟の建物を残地Aに再配置するのは有形的に困難なため、集約
し3階建てとして建築する案です。

■利点
  • 集約することで建物の再配置が可能となり、機能回復が図れる。
  • 残地への移転のため、移転先の土地を見つける必要がない。
■問題点
  • 法制的検討において容積率が不適格になります。
建築面積 延床面積
C棟 125u 250u
残地A面積 390u D棟 42u 82u
167u 332u

(建築する建物は総3階建の建物  332u延床面積÷3階≒110u各階面積)
建ペイ率 390u×0.4=156u 110u 適法
容積率 390u×0.8=312u 332u 違法 ×
 この様に法制上、残地での建築は法制上できません。
従って、C・D棟の2棟を残地Aへ移転することは不可能であるため、この2棟の分割が可能か検討します。
<第二案>分割移転 ( C棟構外再築・D棟曳家)
 直接支障となるC・D棟は共に共同住宅であり2棟に関連性がないため、分離分割することは可能です。D棟を残地内に曳家し、C棟の再配置は有形的に困難であるため、構外再築とする案です。

■利点
  • D棟は曳家のため、建物の機能に変化が及ばない。
  • 曳家工法であるため、再築工法に比較し経済的である。
■問題点
  • 自動車保管場所を考慮しD棟を再配置した場合、北側に袋地ができてしまい、残地の有効利用とはならない。
 次に、残地の有効利用を改善する案を考えます。

<第三案>分割移転  (C棟構外再築、D棟構内再築)
 C棟は第2案と同様に構外再築とし、D棟は間取りの変更を行い構内再築とします。 

■利点
  • D棟を北側に構内再築することで、残地の有効利用が図れる。
  • D棟は構内再築することで、従前と同様の機能が保てる。
■問題点
  • 第2案より補償額が高額になる。
 第1〜3案では、直接支障となるC・D棟が存する残地Aを、移転先として検討してきましたが
 第4案ではA・B棟が存する残地Bも移転先に含み検討を行います。 
   
〈第4案〉
 残地Bに存するA・B棟を東側に曳家し、移転後の空地にC棟を曳家します。
D棟は3案と同様に残地Bに構内再築します。

■利点
  • すべての建物の移転が残地内で可能である。
  • 残地への移転のため、移転先の土地を見つける必要がない。
■問題点
  • 支障とならない建物まで移転が及ぶため経済的に高額となる。
  • すべての建物に移転が生じるため工事期間が長期に及ぶ。
4. まとめ
 以上、第1案から第4案を検討してきましたが、第1案は法制的に不可能であり、第2案は土地の有効利用の観点から合理的ではありません。
第4案は直接支障とならない建物に移転が及ぶため、経済的ではありません。
第3案は分割移転により、従前の機能回復が図れ、残地の有効利用が可能となります。
よって、本件は第3案が採用工法となりました。

 本件の事業計画は一団の土地を縦断し、地続きであった土地を分断してしまうものです。現在は敷地内を自在に往来が可能です。しかし、施工後は自己所有地でありながら、必ず新設された道路を横断する行為が生じてしまいます。このことは被補償者からすれば重大たる阻害と言えます。
 これを解消するために、専用の横断歩道や歩道橋を設置することは、現在の損失補償基準では不可能です。従って、本件は現在の土地・建物の利用状態と建物の関連性を考慮し、従前の機能を損なわない様、検討することが重要になります。


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