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FileNo. 023
 

今回の事例は現道拡幅により郊外型のインテリアショップと酒店が支障となったケ−スです。




1. 対象物件の概要


■ 敷地概要
  • 敷地面積 : 2,400u
  • 買収面積 : 1,050u
  • 残地面積 : 1,350u
  • 取得割合 : 43.7%
  • 建築基準法の用途地域制限
     準工業地域
  • 建築基準法の建築制限
     建ぺい率 :   60%
     容積率   : 200%
     防火指定 :   なし

■ 建物概要
 
  構造 用途 建築面積 延床面積 使用区分
A棟 RC造4階建 店舗 830u 2,650u インテリアショップ
 
B棟 木造平屋建 店舗併用住宅 140u 140u 酒 店
100u 100u 居 宅
240u 240u  
合  計 1,070u 2,890u  

  • A棟の全てとB棟の一部は、所有者が経営する会社が店舗として使用しています。
  • B棟の一部は、所有者が居住しています。
  • 法人事務所はインテリアショップ内にあり、酒店を含めた事務管理を行っています。

■ 駐車場について

A棟の前面には11台分が、B棟の前面には5台分の来客用駐車スペースが確保されています。
 A棟とB棟の間にはガレージが配置され、営業用のライトバン1台・2tトラック2台・自家用車1台、計4台の保管場所になっています。
 郊外型店舗にとって、来客用駐車スペースは必要不可欠な営業用施設です。今回、その全てが支障になることから、利用状況を正確に把握するため駐車場の利用実態調査を行いました。その結果、インテリアショップには10台、酒店には5台の駐車スペースが必要であるという結果になりました。これ以下だと損益分岐点を下まわり、店舗の存続はできないことになります。(損益分岐点の計算については多種に及ぶため、その説明は省略いたします。)



2. 検討のポイント

  1. A棟インテリアショップには10台、B棟酒店には5台の来客用駐車スペースが必要なこと。
  2. 残地に移転可能な面積は1,700uであり、2棟全ての移転は容積率が適合しないこと。
  3. B棟の住居部分は直接支障にならないこと。
  4. A棟の全てとB棟の一部は共に店舗であるが、取扱商品は異なっていること。
  5. 二つの店舗の事務管理はA棟事務所で行っていること。

3. 考えられる案

 残地への全ての建物移転は法制的に困難であることから、分割移転が可能であるか検討を行います。

<第一案> A棟インテリアショップの構内再築工法(全面改造)+B棟併用住宅の構外再築工法
 A棟インテリアショップは現況の形状では残地に再配置できないため、構内再築とします。B棟併用住宅は構外に移転します。


■利点
  • A棟インテリアショップは売場面積が確保でき、従前の販売形態の機能回復が図れる。
  • B棟は移転先を構外に求めることで、従前の併用住宅として機能が回復できる。
■問題点
  • A棟インテリアショップで必要な10台分の来客用駐車スペースが9台しか確保できない。
  • 残地において営業用車輌の駐車スペースの確保ができない。
  • 同一敷地内にある二つの店舗が分離する事で、新たな業務管理が生じる。
  • 居宅と勤務地が分離するため、通勤が生じる。
  • A棟インテリアショップの営業休止期間が長期になる。
  • 補償金額が高額になる。


 次にB棟の移転先を構内に、A棟の移転先を構外に求めた場合について検討します。
<第二案>A棟インテリアショップの構外再築工法+B棟併用住宅の曳家工法
 A棟インテリアショップは構外に移転します。B棟併用住宅は現況の形状で残地に再配置が可能なため曳家工法とします。

■利点
  • A棟、B棟共に、従前の機能が回復できまる。
  • B棟酒店で必要な5台分の来客用駐車スペースの確保が可能である。
  • 営業用車輌の駐車スペースの確保できる。
  • 補償金額が第一案より低額になる。

■問題点
  • 同一敷地内にある二つの店舗が分離する事で、新たな業務管理が生じる。
  • 居宅と勤務地が分離するため、通勤が生じる。
  • B棟酒店の営業休止期間が長期になる。


 B棟併用住宅の店舗と居宅は、勤務地と自宅の関係となりますが、その用途を分離することは可能です。よって、B棟を分割した場合の検討を行います。

<第三案> A棟インテリアショップの構外再築工法+B棟併用住宅の分割移転工法
 A棟インテリアショップは構外に移転します。B棟は酒店を構外に移転し、直接支障となっていない住宅は酒店移転後に補修工事を行うことで機能回復を図ります。


■利点
  • 店舗の移転先を構外に求めることで、従前と同様の営業形態が維持できる。
  • 営業休止期間が短期間である。
  • 補償金額が最も低額になる。

■問題点
  • 居宅と勤務地が分離するため、通勤が生じる。
4. まとめ
 以上、三つの分割案の検討を行いましたが、第一案・第二案は共に業務管理に問題が生じます。又、全ての建物が移転となり、長期の営業休止が伴うことから補償金額も高額になります。
 第三案は、店舗を構外に移転させることで業務管理の問題が解消できます。又、営業休止期間が短期ですみ、住宅部分の移転もない事から、補償金額が最も低額になります。よって、本件は第三案を採用工法として認定しました。新たに生じる通勤費は、『その他通常生じる損失』と認定し一定期間の補償を行いました。
 


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