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FileNo. 024
 

今回の事例は、道路整備事業により、農家敷地に存する鶏舎が支障となったケ−スです。




1. 対象物件の概要


■ 敷地概要
  • 敷地面積 : 3,500u
  • 買収面積 :  950u
  • 残地面積 : 2,550u
  • 取得割合 :  27.1%
  • 建築基準法の用途地域制限
     市街化調整区域
  • 建築基準法の建築制限
     建ぺい率 :   60%
     容積率   : 200%
     防火指定 :   なし

■ 建物概要
 
No 構造及び用途 建築面積 延床面積 用 途 備 考
A棟 木造平家建 230 230 鶏舎 支障建物
B棟 木造二階建 35 70 車庫兼倉庫  
C棟 木造二階建 160 200 専用住宅  
D棟 木造平家建 40 40 倉庫  
E棟 木造平家建 55 50 倉庫  
F棟 木造二階建 180 250 専用住宅  
合 計 700 840    

  • A棟は鶏卵用の鶏を飼育しています。
  • C、F棟は所有者の住居として使用されています。
  • B、D、E棟は車庫、及び倉庫として使用しています。


2. 検討のポイント

  1. 支障となる建物が鶏舎であり、一般に嫌悪施設に類すること。
  2. 残地面積が傾斜地を含め2,550uあること。
  3. A棟とB〜F棟の地盤には約18mの高低差があること。
  4. B〜F棟は支障にならないこと。
3. 考えられる案

 今回支障となる建物は、養鶏農家の複数ある建物の内、鶏舎のみが支障となっています。
 鶏舎など畜産を目的とした施設は、臭気、汚物等の問題から立地条件が極めて限定されます。従って、移転先を構外へ求めるのは困難であるため、残地を移転先と考え検討を行います。
 検討に際し、曳家工法はA棟が在する敷地とB〜F棟が在する残地に約18mの高低差があるため、施工上困難と判断し、検討工法から除外します。

<第一案>
 残地にはA棟を再配置する空地がないため、F棟を西側に曳家し、その跡地にA棟を再築する案です。

■利点
  • 残地内に全ての建物が配置できる。
■問題点
  • 支障とならないF棟の関連移転が生じる。
  • 関連移転が生じるため、補償額が高額となる。



 第一案ではB〜F棟が存する敷地の平坦地を利用し、A棟の移転を検討しました。そこで第二案では傾斜地を利用し、合理的な移転工法を検討します。

<第二案>
 傾斜地への建物の建築は困難でありますが、その1部を切り土し、適切な施工を行えば建築可能な土地に換えることは可能です。本案は、残地の一部を切り土し、A棟を移転させ機能回復を図ります。

■利点
  • 支障建物のみの移転であるため経済的である。
  • 関連移転が生じないため、B〜F棟の機能に支障がない。
  • 直接移転が可能なため、工事期間が短期になる。

■問題点
  • 整地作業(切り土工事)が生じる。




4. まとめ
 今回は移転対象が鶏舎であり、嫌悪施設のため残地に移転先を求めました。
残地の平坦地を利用する、第一案は関連移転が生じてしまい、経済的ではありません。
傾斜地を利用し、切り土工事により土地を有効利用する案は、第一案と比較し、経済的にも合理的であり、B〜F棟の機能に変化が及ぶことはありません。従って、本件は第二案が採用案になりました。
 この様に移転先として認めるのが困難と思われる傾斜地についても、整地作業等、その手法により移転先とすることで、残地の有効利用が図れます。
 又、移転対象が鶏舎であるため、移転及び環境の変化に伴う、鶏の影響についても、鶏の飼育、特性、生産状況等を調査、検討し、移転に伴う、壊死、減卵の補償を行いました


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