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FileNo. 025
 
 今回は、道路拡幅事業により木造2階建店舗併用住宅が支障となり合理的な移転方法を検討したケースです。



1.対象の概要

■ 敷地概要
  • 敷地面積 : 600u
  • 買収面積 :  40u
  • 残地面積 : 560u
  • 取得割合 :  6%
  • 建築基準法の用途地域制限
    • 近隣商業地域
  • 建築基準法の建築制限
    • 建ぺい率  :     80%
    • 容積率    :    200%
    • 防火指定  :     なし
■ 建物の概要 
No 構造及び用途 建築面積 延床面積 備 考
A棟 木造2階建店舗併用住宅 65u 100u 支障建物
B棟 鉄骨造平屋建作業場 30u 30u  
C棟 木造平屋建専用住宅 180u 180u  
合 計 275u 310u  

  • A棟は所有者が1階を店舗(クリーニング業)、2階を住居として利用しています。
  • B棟は機械設備を配置した作業場として利用しています。


2. 検討のポイント

  1. A棟のみ支障となります。
  2. 拡幅道路と残地には40pの高低差が生じます。
  3. A棟2階とC棟は、所有者が住居として利用しています。
  4. A棟1階とB棟は、クリーニング業の店舗と作業場として一体利用されています。

4. 考えられる案

 A棟はB棟が障害となり曳家は困難です。又、改造工法も考えられますが、支障割合が約50%となり、建物全体に改造が及ぶため採用工法とはなりません。従って、A棟は再築として、検討を行います。

<第一案> A棟・構内再築工法(同種同等)

 A棟をC棟南側の空地へ再築する案です。
道路との高低差はスロープを設置し、機能回復を図ります。
 
■ 利点
  • A棟の建築後に移転することで、営業休止期間が短期になります。
  • 従前と同様の機能が維持出来ます。
■ 問題点
  • A棟の移転によりC棟の日照条件が悪くなり、住環境が低下します。
  • 道路に面した店舗が敷地の奥に配置されるため、従前の営業形態の機能が低下します。

 第一案では、住環境と営業形態の機能面に問題点が残りました。第二案ではその問題を解消する案を検討します。

<第二案> A棟・構内再築工法(照応建物)

 A棟を3階建の建物に再築する案です。
道路との高低差はコンクリート階段・スロープを設置し、機能回復を図ります。
 
■ 利点
  • 従前と同じ道路面に建築することで営業形態を損いません。
  • 従前と同様の住環境が保たれます。
■ 問題点
  • 3階建にすることにより、廊下、階段室の面積増加となり、第一案の建物移転費より高額となります。
  • 第一案より営業休止期間が長期になります。
  • 移転工事期間中の仮倉庫費用が生じます。



 第一案・第二案では、直接支障となるA棟のみで検討を行いましたが、第三案では支障とならないB棟の関連移転を考慮し、検討を行います。
<第三案> 曳家工法

 A、B棟を北側に曳家し、カーポートは西側に移転する案です。
道路との高低差は、第二案と同様な方法で機能回復を図ります。
 
■ 利点
  • 2棟曳家を行うことで、建物移転料が第一案・第二案より低額になります。
  • 第二案より営業休止期間が短期となります。
  • 従前の機能回復が図れます。
■ 問題点
  • B棟・カーポートの関連移転が生じます。
  • 移転期間中の仮倉庫費用が生じます。



5. まとめ
以上の3つの案をまとめると下記の表になります。
移転案 第一案 第二案 第三案
A棟 再築(同種同等) 再築(照応建物) 曳家
B棟 移転対象外 移転対象外 曳家
C棟 移転対象外 移転対象外 移転対象外
有形的合理性
機能的合理性 ×
経済合理性 ×
認 定 × ×

上記より本件は、最も合理性に優れた第三案が採用になりました。

 このように複数棟の建物がある場合は、直接支障となる建物のみの移転にとらわれることなく、支障とならない建物の関連移転も考慮し、経済的合理性を踏まえ検討を行うことが必要です。



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