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FileNo. 029
 

今回の事例は、複数の建物が存する農家敷地が支障となり、合理的な移転方法を検討したケースです。




1. 対象物件の概要


■ 敷地概要
  • 敷地面積 : 1,290u
  • 買収面積 :  230u
  • 残地面積 : 1,060u
  • 取得割合 :  17%
  • 建築基準法の用途地域制限
      市街化調整区域
  • 建築基準法の建築制限
     建ぺい率  :   40%
     容積率    :   80%
     防火指定  :    なし
  • その他    : 風致地区
  • 壁面後退   : 隣地から1m、道路から2m

■ 建物の概要
 
No. 構造 ・ 階数 用途 建築面積 延床面積
A棟 木造2階建 専用住宅
153u 194u
B棟 木造2階建 1階車庫
2階専用住宅
79u 145u
C棟 木造平屋建 作業場
26u 26u
D棟 木造2階建 納屋
36u 59u
合計         294u 424u 

  • A棟とB棟の2階は住宅として、D棟は農機具等の倉庫として使用されています。
  • C棟は農作物出荷のための仕分け作業場として使用されています。
  • 自動車保管場所は、B棟1階に2台、D棟下屋に1台、確保されています。



2. 検討のポイント

  • A棟が支障となっていること。
  • 残地があること。
  • 風致地区であり、壁面後退の指定があること。(その他、風致地区内における建築許可基準の説明は多岐に及ぶため、詳細については省略いたします。)
      
    
3. 考えられる案
<第一案>A棟 曳家工法

 直接支障となるA棟を、西側に曳家で移転する案です。B棟、C棟、D棟は直接支障にならないため移転対象外とします。

■利点
  • 曳家であるためA棟の間取りの変更がありません。
  • 関連移転が伴いません。
  • 最も経済的です。
■問題点
  • 壁面後退線を越境します。




A棟の曳家は、法制的に満足しません。次にA棟の構内再築工法について検討します。

<第二案>A棟 構内再築工法(照応建物)

 第一案で記したように、A棟の形状を変えずに再配置するのは困難なため、全面的に改造し建築する案です。B棟、C棟、D棟は直接支障にならないため移転対象外とします。

■利点
  • 建物の機能が確保できます。
  • 関連移転が伴いません。

■問題点
  • 再築期間中はA棟の仮住まいが必要になります。
  • 補償額が高額になります。




次に、経済的であるA棟の曳家工法を考慮し、それに伴う関連移転についての検討を行います。

<第三案> A棟・B棟 曳家工法

 A棟の曳家工法を考慮し、関連でB棟を曳家で移転する案です。C棟、D棟には影響がないことから移転対象外とします。尚、B棟の再築工法(同種同等)も考えられますが、経済的に曳家工法より高額になるため採用にはなりません。

■利点
  • A棟、B棟共に間取りの変更がありません。

■問題点
  • A棟、B棟共に、再築期間中は仮住まいが必要になります。




次に、A棟の移転先を、C棟、D棟の位置に求めた場合の検討を行います。

<第四案> A棟 曳家工法 ・ C棟、D棟 構内再築工法(同種同等)

 A棟の曳家工法を考慮し、関連でC棟、D棟を移転させる案です。A棟の曳家の工程から、C棟、D棟の曳家工法は困難であり、再築工法(同種同等)が採用になります。B棟には影響がないことから移転対象外とします。

■利点
  • A棟、C棟、D棟共に間取りの変更がありません。
  • 経済的です。

■問題点
  • A棟とB棟が近接し、B棟1階車庫への自動車の出入りが困難になります。
  • 曳家期間中はA棟の仮住まいが必要になります。
  • 敷地内の建物の位置が大きく変化します。





4. まとめ

 検討を行った四つの案をまとめると下記の表になります。

移転方法 構内移転
移転案 第一案 第ニ案 第三案 第四案
A 棟 曳 家 再 築
(照応建物)
曳 家 曳 家
B 棟 対象外 対象外 曳 家 対象外
C 棟 対象外 再 築
(同種同様)
D 棟
有形的合理性 ×
機能的合理性 ×
法制的合理性 ×
経済合理性 ×
認 定 × × ×


 以上、第一案から第四案を検討してきましたが、第一案は法制的に不可能であり、第二案は補償額が最も高額になり合理的ではありません。
 第四案は車庫への自動車の出入りが困難になり、従前の機能回復が図れません。第三案は第四案より経済的ではありませんが、従前の機能回復が図れ、残地の有効利用が可能となります。よって、本件は第三案が採用工法となりました。

 このように複数棟の建物がある場合は、支障とならない建物の関連移転も考慮し、その範囲及び移転方法は、現地で建物の状況、利用形態等を十分把握し、客観的立場に立って判断をしなくてはなりません。


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