1. 対象物件の概要 |
■ 敷地概要
- 敷地面積 : 1,290u
- 買収面積 : 230u
- 残地面積 : 1,060u
- 取得割合 : 17%
- 建築基準法の用途地域制限
市街化調整区域
- 建築基準法の建築制限
建ぺい率 : 40%
容積率 : 80%
防火指定 : なし
- その他 : 風致地区
- 壁面後退 : 隣地から1m、道路から2m
■ 建物の概要
No. |
構造 ・ 階数 |
用途 |
建築面積 |
延床面積 |
A棟 |
木造2階建 |
専用住宅
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153u |
194u |
B棟 |
木造2階建 |
1階車庫
2階専用住宅 |
79u |
145u |
C棟 |
木造平屋建 |
作業場
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26u |
26u |
D棟 |
木造2階建 |
納屋
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36u |
59u |
合計 |
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294u |
424u |
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- A棟とB棟の2階は住宅として、D棟は農機具等の倉庫として使用されています。
- C棟は農作物出荷のための仕分け作業場として使用されています。
- 自動車保管場所は、B棟1階に2台、D棟下屋に1台、確保されています。
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2. 検討のポイント |
- A棟が支障となっていること。
- 残地があること。
- 風致地区であり、壁面後退の指定があること。(その他、風致地区内における建築許可基準の説明は多岐に及ぶため、詳細については省略いたします。)
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3. 考えられる案 |
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<第一案>A棟 曳家工法 |
直接支障となるA棟を、西側に曳家で移転する案です。B棟、C棟、D棟は直接支障にならないため移転対象外とします。
■利点
- 曳家であるためA棟の間取りの変更がありません。
- 関連移転が伴いません。
- 最も経済的です。
■問題点
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A棟の曳家は、法制的に満足しません。次にA棟の構内再築工法について検討します。 |
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<第二案>A棟 構内再築工法(照応建物) |
第一案で記したように、A棟の形状を変えずに再配置するのは困難なため、全面的に改造し建築する案です。B棟、C棟、D棟は直接支障にならないため移転対象外とします。
■利点
- 建物の機能が確保できます。
- 関連移転が伴いません。
■問題点
- 再築期間中はA棟の仮住まいが必要になります。
- 補償額が高額になります。
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次に、経済的であるA棟の曳家工法を考慮し、それに伴う関連移転についての検討を行います。 |
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<第三案> A棟・B棟 曳家工法 |
A棟の曳家工法を考慮し、関連でB棟を曳家で移転する案です。C棟、D棟には影響がないことから移転対象外とします。尚、B棟の再築工法(同種同等)も考えられますが、経済的に曳家工法より高額になるため採用にはなりません。
■利点
■問題点
- A棟、B棟共に、再築期間中は仮住まいが必要になります。
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次に、A棟の移転先を、C棟、D棟の位置に求めた場合の検討を行います。
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<第四案> A棟 曳家工法 ・ C棟、D棟 構内再築工法(同種同等) |
A棟の曳家工法を考慮し、関連でC棟、D棟を移転させる案です。A棟の曳家の工程から、C棟、D棟の曳家工法は困難であり、再築工法(同種同等)が採用になります。B棟には影響がないことから移転対象外とします。
■利点
- A棟、C棟、D棟共に間取りの変更がありません。
- 経済的です。
■問題点
- A棟とB棟が近接し、B棟1階車庫への自動車の出入りが困難になります。
- 曳家期間中はA棟の仮住まいが必要になります。
- 敷地内の建物の位置が大きく変化します。
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4. まとめ |
検討を行った四つの案をまとめると下記の表になります。
移転方法 |
構内移転 |
移転案 |
第一案 |
第ニ案 |
第三案 |
第四案 |
A 棟 |
曳 家 |
再 築
(照応建物) |
曳 家 |
曳 家 |
B 棟 |
対象外 |
対象外 |
曳 家 |
対象外 |
C 棟 |
対象外 |
再 築
(同種同様) |
D 棟 |
有形的合理性 |
× |
○ |
○ |
○ |
機能的合理性 |
○ |
○ |
○ |
× |
法制的合理性 |
× |
○ |
○ |
○ |
経済合理性 |
◎ |
× |
△ |
○ |
認 定 |
× |
× |
○ |
× |
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以上、第一案から第四案を検討してきましたが、第一案は法制的に不可能であり、第二案は補償額が最も高額になり合理的ではありません。
第四案は車庫への自動車の出入りが困難になり、従前の機能回復が図れません。第三案は第四案より経済的ではありませんが、従前の機能回復が図れ、残地の有効利用が可能となります。よって、本件は第三案が採用工法となりました。
このように複数棟の建物がある場合は、支障とならない建物の関連移転も考慮し、その範囲及び移転方法は、現地で建物の状況、利用形態等を十分把握し、客観的立場に立って判断をしなくてはなりません。
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