広彩コンサルタントロゴ



トップページ会社概要沿革業務実績委託事例案内図採用情報





FileNo. 031
 
 今回の事例は、開業医の診療所(整骨院)併用住宅の来院用駐車場が支障となり、合理的な移転方法を検討したケースです。



1.対象の概要

■ 敷地概要
  • 敷地面積 :  300u
  • 買収面積 :   50u
  • 残地面積 :  250u
  • 取得割合 :  16.6%
  • 建築基準法の用途地域制限    
    • 第一種住居地域
  • 建築基準法の建築制限
    • 建ぺい率  :     60%
    • 容積率    :    200%
    • 防火指定  :準防火地域
■ 建物の概要 
  • 構造用途 : 木造平家建診療所(整骨院)併用住宅
  • 建築面積 : 150u
  • 延床面積 : 150u(診療所部分70u・住居部分80u)
■ 建物と敷地内の使用状況等
  • 建物は住居と診療所に分かれています。
  • 来院用駐車場は5台確保されています。
  • 公共交通機関未整備地域のため、患者の多くは自動車で来院しています。
  • 自家用駐車場は1台確保されています。
■ 患者用駐車場について
  • 今回、敷地内に設置された5 台分の来院用駐車場の全てが支障になることから、利用状況を正確に把握するため駐車場の利用実態調査を行いました。その結果、支障になる5台の駐車スペースは必要であるという結果になりました。これ以下だと損益分岐点を下まわり、店舗の存続はできないことになります。(損益分岐点の計算については多岐に及ぶため、その説明は省略いたします。)



2. 検討のポイント

  • 来院用駐車場の5台全てが支障になること。
  • 当該診療所には5台の駐車スペースが必要なこと。
  • 建物は支障になっていないこと。
  • 建物は診療所と住居に分かれていること。

3. 補償検討フロ−

「自動車の保管場所の確保に要する費用の補償取扱要項 : 4.業務用建物敷地内にある保管場所の場合」
条件1
一団の土地内において建物を移転することなく現状の保管場所が確保できるか。
→残地配置図のとおり、残地では来院用駐車場の確保はできません。

↓条件Aに進みます。
条件2
保管場所の使用形態等から建物が存する一団の土地と分離(割)が可能か。
→整骨院に来院する患者のために敷地内に確保された駐車場であり、分離することは不可であると判断しました。
↓条件Bに進みます。
条件3
保管場所を一部立体化することが可能な使用実態か。
→駐車場利用者が整骨院に来院する患者であり、駐車場の規模も小さい事から保管場所の立体化は不可であると判断しました。
↓条件Cに進みます。
条件4
一団の土地内において、建物を移転の対象にすることによって現状の機能が確保できるか。
→支障にならない建物を移転させることで、現状の来院用駐車場が確保できるかの検討を行います。

4. 考えられる案
 
 建物の一部を残地で移転することによって、現状の来院用駐車場が確保できるかの検討を行います。
<第一案> 改造工法(住居部分改造+診療所部分既存のまま)

 診療所部分はそのままで、住居部分を全面改造し2階建に建築する事で、来院用駐車場を確保する案である。
 
■ 利点
  • 建物の一部移転が可能です。
  • 営業休止期間が短期間です。
  • 経済的です。
■ 問題点
  • 必要な5台分の駐車スペ−スが2台しか確保できません。
  • 住居部分の建築期間中は仮住まいが必要になります。


 第一案では5台の来院用駐車場が確保できません。そこで次に、住居部分と診療所部分を分割した案を検討します。
 尚、住居部分に架台を組みピロティ−方式にすることで来院用駐車場を確保する案も検討しましたが、建ぺい率が満足しませんでした。

<第二案> 分割移転工法(住居部分構外再築+診療所部分既存のまま)
 診療所部分はそのままで住居部分を構外に移転し、住居跡地に来院用駐車場を設置する案です。
 
■ 利点
  • 建物の一部移転が可能です。
  • 営業休止期間が短期間です。
■ 問題点
  • 必要な5台分の駐車スペ−スが4台しか確保できません。
  • 居宅と勤務地が分離するため、通勤が生じます。
  • 新たな移転先が必要になります。



 第二案でも5台の来院用駐車場は確保できません。また、新たに通勤が生じます。第一案、第二案では建物の一部移転について検討を行いましたが、次に建物全てを移転させる場合の検討を行います。
 尚、第二案では、1台分の自家用駐車場を近隣に求め、来院用駐車場を確保する案も検討しましたが、近隣に該当する貸駐車場はありませんでした。

<第三案>構内再築工法(照応建物)
 木造平家建診療所併用住宅を、2階建に集約し残地内に再築する案です。
 
■ 利点
  • 来院用駐車場が確保できます。
  • 従前と同様の機能が保てます。
■ 問題点
  • 移転工期が長期に及び、営業休止期間が長くなります。
  • 仮住居補償が生じます。
  • 補償額が高額になります。



5. まとめ
以上の3つの案をまとめると下記の表になります。
移転方法 第一案改造工法 第二案分割移転工法 第三案構内再築工法
建物移転内容 住居部分 全面改造 構外再築 再築(照応建物)
診療所 既存のまま 既存のまま
有形的合理性
機能的合理性 × ×
経済合理性 ×
認 定 × ×

上記より本件は、第三案が採用となりました。
今回の事例は自動車保管場所の必要性が重要視され、直接支障にならない建物を移転する事で、機能回復を図りました。
 日常生活や営業等に不可欠である自動車保管場所を失うことで、大きな損失につながるケ−スがあるだけに、個別案件毎に保管場所としての使用実態等の現況を十分に把握し、機能回復の必要性の有無、機能回復の範囲等について検討したうえで、補償をすることになります。


>>このページの先頭へ