1.敷地、物件の概要 |
■ 物件概要
■ 敷地概要
- 敷地中央部には、道路から住宅に向かい、上り勾配の石畳を配したスロープが設けられ、両側はその勾配を考慮し築造された、美的景観を有する庭園となっています。
- 道路沿いの東側に木造平家建車庫があり、普通自動車1台が保管されています。また、車庫前は軽自動車1台の駐車スペースとなっています。
- 道路添いには、上部に瓦屋根を配した鉄筋コンクリート(しっくい塗り)塀が設けられています。
■ 現況道路と計画道路の状況
- 改築事業に伴い、南側道路面が約30p高くなります。
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2. 本件の補償の考え方 |
本件は、敷地・建物及び工作物等が直接支障となりませんが、敷地と道路に高低差が生じ、出入りに支障をきたしたため、起業者に対し隣接者(工事を必要とする者)から工事費が請求されたケースです。このような場合、「公共用地の取得に伴う損失基準要綱」第44条隣接土地に関する工事費の補償※に基づき検討します。 |
※ 公共事業により土地の収用又は使用及び残地以外の土地(隣接地)について、通路、みぞ、かき、さく、その他の工作物等の新築、改築、増築、修繕又は盛土、切土をする必要が生じた場合は、これらの工事を必要とする者の請求により、 起業者は工事費の全部又は一部を補償しなければならない。 |
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3. 工事に伴う支障状況 |
敷地と道路に約30pの高低差が生じるため、車庫・アプローチへの出入りに支障をきたします。また、塀が約30p埋没します。
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4. 補償内容 |
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車庫前の駐車スペースにスロープを設け、機能回復が図れるかを検討しましたが、このスロープに軽自動車を駐車すると乗り降りが困難となります。また、車庫が道路より低くなるため、雨水の排水処理設備が必要です。よって今回は、車庫を計画道路と同じ高さに揚家※し、道路から車庫までのスペースを造成することで、従前の機能回復を図りました。
※揚家・・・建物を取り壊さずにジャッキで持ち上げ、水平にする工事です。
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アプローチ前についても、車庫前と同様にスロープを検討しましたが、庭園は上り勾配を考慮し築造されているため、道路から一度下って上るスロープでは、くぼみが生じ庭園の美的景観を損ないます。また、雨水の排水処理設備が必要となります。よって今回は従前と同様に、計画道路から住宅までを上り勾配とすることが最適であると考え、現況スロープへすり付けることで、美的景観を損なわないよう、機能回復を図りました。
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今回は機能上特に問題ないことから、隣接者と話し合い、納得していただいた上で、補償対象外としました。
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4. まとめ |
車庫前については、車庫を揚家することにより従前の機能回復を図り、また、アプローチ前については従前と同様のスロープを設けることにより、景観を損なわずに機能回復を図る事が出来ました。また、塀については機能的に問題ないと判断し、隣接者との話し合いの結果、補償対象外としました。
本件は美的景観を有する庭園等の補償であり、機能回復を図るだけではなく、美的景観についても十分検討することが必要となりました。
今回は、隣接地補償を取り上げましたが、この補償を受けるためには、工事の完成日から1年以内(土地収用法第九十三条 第2項)に、隣接者から起業者に対して、補償の請求をしなければなりません。
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