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FileNo. 037
 
 今回の事例は、道路拡幅事業に伴い、ガソリンスタンドと隣接する駐車場が支障となり合理的な移転方法を検討したケースです。



1.対象の概要

■ 敷地概要

  ガソリンスタンドと隣接する駐車場は同一所有者です。
  • 敷地面積 :  1,110u
  • 買収面積 :   190u
  • 残地面積 :   920u
  • 取得割合 :    17.1%
用途別敷地面積集計表
用途 敷地面積@ 買収面積A 残地面積@−A 取得割合A÷@
ガソリンスタンド敷地 850.00u 150.00u 700.00u 17.6%
駐車場敷地 260.00u 40.00u 220.00u 15.3%
1,110.00u 190.00u 920.00u 17.1%
  • 幹線道路に面する郊外地
  • 都市計画法の用途地域制限    
    • 第一種住居地域
  • 建築基準法の建築制限
    • 建ぺい率  :    60%
    • 容積率    :   200%
    • 防火指定  :    なし
■ 建物の概要 

構造及び用途 建築面積 延床面積 備考
A棟 鉄骨造平家建店舗 100u 100u 支障建物
B棟 鉄骨造平家建キャノピ− 170u 170u 支障建物
270u 270u  
(キャノピーとは、給油車輌の日除け、雨除けのために設けられた上屋です。)


■ ガソリンスタンド機器設備の概要
  • 給油方式:アイランド型(地上固定式タイプ)5基
  • 計量機:自動車給油用4基、灯油用1基
  • 危険物地下貯蔵タンク:6基
  • 洗車機:1基
■ 消防法上の概要
  • 取扱所の区分・・・営業自動車給油取扱所
  • 取扱所の構造・・・屋外型(当社事例No.11参照)
■ 建物と敷地の使用状況等 
  • 建物の使用状況    
    • A棟はガソリンスタンド来客者の、休憩所として設けられている他に、車輌整備室、従業員控室、部品工具等の倉庫、便所等として使用されています。
  • ガソリンスタンドの車両出入りの状況
    • 角地であり敷地の東側と西側の、2ヶ所から出入りが可能です。地下タンクへの注油は1日1回、16tのタンクロ−リ−で行われています。
  • 駐車場敷地
    • 6台分のスペースを月極駐車場として賃貸し、3台分のスペースをガソリンスタンド従業員が専用駐車場として利用しています。

2. 検討のポイント

  • 建物A棟及びB棟が支障となっていること。
  • ガソリンスタンドスタンド機器設備は直接支障となっていないこと。
  • 地下タンクへの注油が、16tのタンクロ−リ−で行われていること。
  • ガソリンスタンドと隣接する駐車場敷地は、同一所有者であること。
  • それぞれの倉庫には、入口まで車で乗り入れ、農器具等の般入出を行っていること。
建築基準法、消防法等の関係法令の検討については、多種に及ぶため割愛します。

4. 考えられる案
<第一案>曳家工法(建物を現在の形状まま、残地に移動させる工法)

 直接支障となるA・B・C棟のみを再築し、残地内に再配置する案です。

■ 利点
  • 建物の機能に変化が及びません。
■ 問題点
  • タンクローリーの車両動線の確保ができません。
  • スタンド機器設備のほとんどに、関連移転が生じます。
  • 敷地内の全ての物件が移転対象となり、補償金額が高額になります。

 本件の曳家工法は機能回復が図れず、補償金額も高額になります。次に、同種同等の構内再築工法(建物を現在の形状で、残地に建築する工法)の検討も行いましたが、曳家工法より移転期間に日数を要するため補償金額がさらに高額となり、各車両の動線も確保できませんでした。そこで、建物の形状を変更した場合の案について検討します。
<第二案>照応建物による構内再築工法

 支障になる建物A棟とB棟の形状を変更し、残地に建築する案です。

■ 利点
  • 建物は構内再築することで、従前と同様の機能回復が図れます。
  • ガソリンスタンド機器設備の関連移転が少なくなります。(軽量機4機と地下タンク1機)
■ 問題点
  • タンクローリーの車両動線の確保ができません。
  • 建物が建替えになることで、第一案より営業休止期間が長期になります。

 残地では、車輌の動線の確保が出来なくなり、従前の機能回復が図れません。そこで隣接地を移転先に加えた案の検討を行いますが、この場合の曳家工法と同種同等の構内再築工法は、スタンド機器設備のほとんどに関連移転が生じるため経済的ではありません。また、給油方式を、ノンスペース型式(懸垂式タイプ)とする案も考えられますが、軽量機及び配管の全面改造及び新たな機械室が必要となり経済的ではありません。

<第三案>照応建物による構内再築工法(隣接地を移転先に加えた場合)

 駐車場敷地を移転先とし、A棟とB棟の形状を変更し再築する案です。

■ 利点
  • 従前と同様の機能回復が図れます。
  • ガソリンスタンド機器設備の関連移転が少なくなります。(軽量機4機と洗車機)
  • A棟再築中に既存A棟の使用が可能になり、営業休止期間が短期になります。
  • 経済的です
■ 問題点
  • 6台分の月極駐車場が喪失します。
5. まとめ
以上の3つの案をまとめると下記の表になります。
移転方法 第一案 第二案 第三案
移転方法 曳家工法 再築工法(照応建物) 再築工法(照応建物)
有形的合理性 ×
機能的合理性 × ×
経済合理性 ×
認 定 × ×
 本件は上記の通り第三案が採用になりました。
 ガソリンスタンド敷地の残地だけでは、各車輌の動線に支障をきたし、従前の機能回復にはいたらず、経済的にも高額になりました。そこで、隣接する敷地に着目し、移転先に加えることで、従前の機能が図れ、経済的でした。なお、第三案で問題になった月極駐車場については、買収される土地の代金で、代替の土地を購入して頂くということになりました。
 ガソリンスタンドは、危険物の規制に関する政令などにより、計量機、地下貯蔵タンクなどの各設備に、設置基準が定められており、移転工法を検討する場合は、原則としてこれらの基準に適合させるよう、十分考慮しなければなりません。また、給油、注油、整備、洗車を行う各車輌の移動が、円滑に行えるように空地を確保しつつ、計量機、地下貯蔵タンクなどの各設備の配置を、検討する必要があります。

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