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FileNo. 038
 
 今回の事例は現道拡幅により、大手電機メーカーの本社工場敷地の正門等が支障となったケ−スです。



1.対象の概要

■ 敷地概要
  • 敷地面積 :  62,000u
  • 買収面積 :    650u
  • 残地面積 :  61,350u
  • 取得割合 :     1.0%
  • 建築基準法の用途地域制限    
    • 工業地域
  • 建築基準法の建築制限
    • 建ぺい率  :  60%
    • 容積率    : 200%
    • 防火指定  :  なし
■ 建物の概要 

 建物の使用区分
No 構造・階数 用途 建築面積 延床面積 備考
A棟 重量鉄骨造3階建 事務所 910u 2,300u  
B棟 RC造2階建 守衛所 110u 90u  
C棟 鉄骨造平家建 倉庫 420u 420u  
D棟 木造平家建 工場 100u 100u 生産施設 
E棟 木造平家建 受電室 70u 70u 生産施設
F棟 木造平家建 研修室 430u 430u   
G棟 木造2階建  倉庫 290u 580u  

■ 建物と敷地内の使用状況等
  • 支障となる正門部分は、420uの面積を有し、間口25mで主要道路に面し、社章看板、銘板が設けられ、大手電機メーカーの本社の顔としてゆとりある景観を構成している。
  • 正門は24時間利用され、車輌での利用は普通車輌(社用車・役員通勤車・外来者)のみである。なお、通勤車輌の乗り入れは禁止されている。
  • 正門に隣接してB棟守衛所が設けられ、社員及び外来者の管理及び防犯のために、警備員が交代で詰めて対応しており、正門と守衛所は密接不可分の関係にある。
  • 正門の他に、南門、北門が設けられている。南門は、社員及び、製品等の搬出入トラックが利用しており、北門は、社員のみが利用している。なお、南門にも守衛所が設けられている。
  • A棟は、全ての業務の管理を行なう会社の中枢である。C棟では、全ての工場で使用する部品の供給業務が行なわれ、部品の自動検索システムを設置し対応している。E棟は全ての建物に電気を供給する受電室である。F棟は研修室であるが、一部娯楽室としても使用されており、直接業務にかかわらない。なお、当該工場は工場立地法で規定する既存特定工場に該当する。(受託事例No.019参照)
  • 正門とA棟の間には9台の役員駐車場が設けられ、全てが支障になる。従業員用駐車場は工場近隣に17ヶ所設けられ、1,100台が駐車可能だが、満車である。
  • 敷地南側には多目的スペースが設けられ、製品の展示場、社内の運動会等に利用されている。


2. 検討のポイント

  • 正門と役員駐車場が支障となっており、建物は支障にならないこと。
  • 正門と守衛所は密接不可分の関係にあること。
  • 正門の他に、南門、北門が設けられていること。
  • A棟、E棟は、機能的に重要であり、関連移転が伴わないこと。
  • F棟は直接業務にかかわらないこと。
  • 工場立地法で規定する工場であること。(建築基準法等も含め、各案において検討しましたが、いずれも適合しました。なお、その説明は多種に及ぶため、詳細については省略します。)

4. 考えられる案
 
 まず、建物の関連移転が伴わない案を検討しましたが、敷地の確保が出来ないことから、大手電機メーカー本社正門としてのゆとりある景観が保てず、機能回復は図れませんでした。(こちらも、詳細については省略します。)

<第一案>B棟守衛所の構内再築

 B棟守衛所の庇の形状を変更して、現在より東側に建築する案です。その移転工程は次の通りです。

@ B棟守衛所の機能を南門守衛所に移転させる。
      ↓
A B棟守衛所を解体する。
      ↓
B B棟守衛所の庇の形状を変更して、現在より東側に建築する。
      ↓
C B棟守衛所の機能を南門守衛所から復帰させる。

 なお、B棟守衛所の建築工事期間中は、正門の代わりに南門を使用する事で、使用頻度が煩雑になりますが、南門の守衛所にB棟守衛所の警備員を配置する事で、対応が可能であると判断しました。

■ 利点
  • 建物移転が1棟だけなので経済的であり、移転期間も短期間ですむ。
  • 営業休止が発生しない。
  • 役員駐車場が確保出来る。
■ 問題点
  • 正門面積が著しく減少し、機能回復が図れない。
  • 混雑時には受付待機車輌が公道に停車するおそれがある。

<第二案>B棟守衛所、C棟倉庫の構内再築

 B棟守衛所は庇の形状を変更して、C棟倉庫は2階建に集約し建築する案です。C棟倉庫建築中は仮設の建物を設置することで、営業休止が伴いません。その移転工程は次の通りです。

@ C棟倉庫の仮設建物を、多目的スペースに建築し新規に、部品の自動検索システムを設置する。
      ↓
A C棟倉庫の機能を仮設建物に、B棟守衛所の機能を南門守衛所に移転させる。
      ↓
B B棟守衛所、C棟倉庫を解体する。
      ↓
C C棟跡地に、B棟守衛所は庇の形状を変更して、C棟倉庫は2階建に集約
し建築する。
      ↓
D C棟倉庫の機能を仮設建物から、B棟守衛所の機能を南門守衛所から復帰
させる。
 
■ 利点
  • 正門の機能が確保出来る。
  • 営業休止が発生しない。
  • 役員駐車場が確保出来る。
■ 問題点
  • 頻繁に製造部品の供給業務を行なうC棟倉庫を2階建にすることで、作業動線が上下に分かれ、業務の効率が低下する。
  • 部品の自動検索システムを新たに2回設置するため、補償額が高額になる。
  • 多目的スペースが一時使用できない。


<第三案>B棟守衛所、C棟倉庫、F棟研修室の構内再築
 
 B棟守衛所は庇の形状を変更して、C棟倉庫は機能低下にならないように現在の形状で、F棟研修室は2階建に集約し建築する案です。また、F棟研修室の解体跡地にC棟倉庫を建築することで、営業休止が伴いません。その移転工程は次の通りです。

@ 直接業務にかかわらないF棟研修室の動産を仮倉庫に保管する。
      ↓
A F棟研修室を解体する。
      ↓
B F棟研修室跡地に、C棟倉庫の形状を変えずに建築する。
      ↓
C 現在のC棟倉庫の機能を移転させる。
      ↓
D B棟守衛所の機能を南門守衛所に移転させる。
      ↓
E B棟守衛所、C棟倉庫を解体する。
      ↓
F C棟倉庫跡地に、B棟守衛所は庇の形状を変更して、F棟研修室は2階建に集約し建築する。
      ↓
G B棟守衛所の機能を南門守衛所から、F棟研修室の動産を仮倉庫から復帰させる。
 
■ 利点
  • 機能回復が図れる
  • 営業休止が発生しない。
  • 役員駐車場が確保出来る。
■ 問題点
  • F棟研修室が一時使用できない。
  • 関連移転の建物が3棟になる。
  • 移転期間が長期になる。



5. まとめ
 第一案は経済的ではありますが、正門敷地が減少し機能回復が図れません。第二案は正門の機能は確保出来ますが、平家建の倉庫を2階建に集約することになり、業務の効率が低下します。第三案は3棟の建物を移転することで、従前の機能回復が図れます。

 以上の3案をまとめると以下の通りとなります。
検討案 第一案 第二案 第三案
有形的合理性 ×
機能的合理性 × ×
経済合理性 ×
認 定     採用

今回の事例のように、建物が支障にならない場合でも、工作物等支障になる機能の重要性、配置の状況、規模等を考慮し、建物を移転するケースもあります。そのためには、敷地の使用状況、建物等の使用状況、法人の規模等を十分把握し、慎重に補償範囲を決定することになります。


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