1. 対象物件の概要 |
- 敷地面積 約980u
- 買収される面積 約80u
- 残る面積 900u
- 買収される割合 約8%
- 街道沿いに店舗、工場等が混在する地域
- 建築基準法の用途地域制限
準工業地域
- 建物の構造用途
A棟:鉄骨造平家建店舗(ショ−ル−ム)事務所
B棟:鉄骨造平家建修理工場
C棟:鉄骨造平家建検査場
D棟:鉄骨造平家建車庫(修理車輌)
- 駐車場の位置及び収容台数
A棟廻り:来客用車輌6台
D棟:待機用車輌6台
- 車輌の修理工程
@ A棟事務所で受注 ↓ A D棟車庫で保管 ↓ B B棟修理工場で整備 ↓ C
C棟検査場で検査 ↓ D 洗車場で一柱式リフトを使用し洗車 ↓
E 納車
- 支障状況
D棟:鉄骨造平家建車庫 4台分の来客用駐車場
洗車場の一部
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2. 検討のポイント |
- 支障となるD棟の建築が、残地内において可能であるか検討します。
- 支障となる4台分の来客用駐車場を、残地内にどのように確保するか検討します。
なお、来客用駐車場は分離不可能であり、また残地内においても立体駐車場を設置することは不可能であることが判明しています。(検討内容については省略いたします。)
- 支障となる洗車場の機能回復と、車輌の動線が確保できるか検討します。
- 従前の機能回復を考慮した上で、移転の範囲を最小限に止めるように検討します。
- 営業休止期間が短期になるように検討します。
- 道路運送車両法に適合するか検討します。(工員数、整備士数、屋内現車作業所、その他作業所、車輌置場等を各案において検討した結果いずれも適合しました。尚、その説明は多種に及ぶため、詳細については省略いたします。)
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3. 考えられる案 |
<第一案>
支障となるD棟の形状を変更し残地内に建築する案です。A棟の廻りには来客用駐車場が4台しか確保できないことから、不足する2台分をD棟の北側に確保します。また、一柱式リフトを北側に移転させる事で、狭くなる洗車場の有効的な利用を図ります。
<利点>
- D棟は建物の形状を変更し、車輌の動線を妨げないように建築することによって、従前と同じ機能が回復します。
- 直接支障となっているD棟及び工作物のみの移転であるため、残地内の建物の利用形態が維持できます。
- 移転対象が少ないため、建物等の移転費用が低額となります。
- 工事期間が短いため、営業休止の補償が低額となります。
<問題点>
- D棟の北側に2台分の来客用駐車場を確保すると、待機車輌と来客用車輌の動線が交差し危険が伴い、整備の作業効率も悪くなります。
- 洗車場へ進入する車輌の動線が確保できなくなります。
- 洗車場のスペースが狭くなるため、作業効率が悪くなり、従前と同じ機能が果たせなくなります。
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第一案は移転対象が少なく経済的な案ですが、安全性と作業効率の低下が問題となります。 したがって、第二案ではこの点に留意して考えました。 |
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<第二案> 現在平家建のA棟を2階建に変更し、従前と同等の駐車スペースを確保します。
また、洗車場の進入経路と作業スペースを従前と同じように確保するため、B棟を1m後退して建築する案です。直接支障となるD棟は第一案と同じ移転方法です。
<利点>
- 来客用駐車場の配置が従前と変わらないため、駐車場の機能が低下しません。
- 洗車場の作業スペースが従前と変わらないため、作業効率が低下しません。
<問題点>
- A棟とB棟を移転対象としたため、影響範囲が広がり、建物等の移転費用が第一案より高額となります。
- 工事期間が長くなるため、営業休止の補償が第一案より高額となります。
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<第三案> 第三案はB棟の支障部分を切り取る除却工法です。D棟及びA棟は第二案と同じ移転方法です。除却工法は、他の工法と比較すると極めて採用することが少ない工法です。その理由は、建物の支障範囲が僅かで、かつ建物の利用目的に供していないことが、現在から将来に亘り客観的に認められないと採用できない工法だからです。(「用地取得と補償」の232頁参照) 今回、除却工法を採用案とした理由は以下の通りです。 洗車場の機能回復を行う上で支障となる部分は、B棟の南側1mの範囲内であります。この部分は建物の全体面積に比較して僅かな部分であり、かつ車輌整備の作業に供されている部分ではありません。よって、この支障部分を除却しても修理工場としての機能には影響を与えません。
<利点>
- 来客用駐車場の配置が従前と変わらないため、駐車場の利用価値が低下しません。
- 洗車場の作業スペースが従前と変わらないため、作業効率が低下しません。
- 除却工法を採用することにより影響範囲が最小限に抑えられ、建物等の移転費用が第二案より低額となります。
- 工事期間が短縮できるため、営業休止の補償が第二案より低額となります。
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4.まとめ |
本件は第三案が採用案となりました。
今回の事例のように敷地内に複数の建物がある場合には、直接支障となっている建物等の移転先をまず残地内に求め、関連して移転を要する範囲を従前の機能回復を考慮した上で決定し、移転工法を認定しなければなりません。
一般に移転補償を考えるにあたり、関係人の多大なるご理解とご協力を得なければならないのは言うまでもありませんが、除却工法の認定にあたっては更に相互の理解を深める必要が何よりと思うところであります。
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