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FileNo. 041
 
 今回は、道路整備事業及び残地の一時使用により、農業用倉庫が支障となったため移転方法を検討したケースです。



1.対象の概要

■ 敷地概要
  • 敷地面積 :  150u
  • 買収面積 :   20u
  • 残地面積 :  130u
  • 取得割合 :  13.33%
  • 用途地域制限    
    • 市街化調整区域
  • 建築制限
    • 建ぺい率  :    60%
    • 容積率    :   200%
■ 建物の概要 

  • 構造用途 :  木造2階建倉庫
  • 建築面積 :  50u
  • 延床面積 :  80u

■ 敷地の使用状況等
  • 敷地北側は県道に面しており、それ以外は私有地と面しています。
  • 敷地内には木造2階建倉庫が建築されていて、農具等を収納しています。


2. 検討のポイント

 今回の事例で考慮しなければならない点は以下の通りです。
  • 買収地は僅かであるが、道路工事期間中の2年間は工事影響範囲内の敷地(※一時使用地)が使用できないこと。
    ※地権者に地代を払って、工事に必要な範囲を一時的に借り受けます
  • 敷地南側にできる新道路は残地と2m以上の高低差ができることから、残地から新道路への出入りはできないこと。
  • 所有者は高齢者であること。
  • 敷地北側の県道を挟んで向かい側に母屋敷地があること。
  • 倉庫と母屋は密接不可分の関係にあること。(倉庫には母屋で日常的に使用するものも保管されており、母屋と倉庫を行き来することが多い等の理由による)
  • 倉庫内の農具は、近隣に存する畑での農作業に必要であること。
  • 近隣に貸倉庫や貸コンテナは存在しないこと。
  • 敷地北側のスペースは、積み卸しのための車輌搬入場所として使用しています。

3. 考えられる案
<第一案> 

 建物を撤去し、工事影響範囲の外側に3階建の照応建物を再築する案です。建物を3階建にすることによって再配置が可能となります。
 
移転工程は以下の通りです。

  1. 照応建物の建築(残地・工事影響範囲の外側)
  2. 動産の移転(木造2階建倉庫→照応建物)
  3. 木造2階建倉庫の撤去

■ 利点
  • 関連移転が生じません。
  • 動産の移転が1回で済みます。
  • 経済的です。
■ 問題点
  • 3階建になるため、階段の上り下りが増え、倉庫機能が低下します。
  • 積み卸しのための車輌スペースが確保できなくなります。

<第二案> 
 
 母屋敷地に3階建の照応建物を再築する案です。
 
移転工程は以下の通りです。

  1. 庭木の移転(母屋敷地)
  2. 照応建物の建築(母屋敷地)
  3. 動産の移転(木造2階建倉庫→照応建物)
  4. 木造2階建倉庫の撤去

■ 利点
  • 積み卸しのための車輌スペースが確保できます。
  • 動産の移転が1回で済みます。
■ 問題点
  • 母屋南側に3階建ての倉庫が配置されることにより、日照条件に影響を及ぼします。
  • 3階建になるため、階段の上り下りが増え、倉庫機能が低下します。
  • 庭木の関連移転が生じます。



<第三案>
 
 建物を撤去し、道路工事完了後に同種同等の建物を残地に再築する案です。近隣に貸倉庫がないため、母屋敷地に仮設のプレハブ倉庫を設置し、動産を一時的に保管する案です。
 
移転工程は以下の通りです。
1. 庭木の移転(母屋敷地)
2. 仮設倉庫の設置
3. 木造2階建倉庫の撤去
4. 木造2階建倉庫の撤去
※道路工事の完了
5. 木造2階建倉庫の再築
6. 動産の移転(仮設倉庫→木造2階建倉庫)
7. 仮設倉庫の撤去

■ 利点
  • 従前の機能回復を図ることができます。
  • 従前同様に、残地を有効に使用することができます。
  • 積み卸しのための車輌スペースが確保できます。
■ 問題点
  • 仮設倉庫の設置が必要となるため、費用が高額になります。
  • 庭木の関連移転が生じます。
  • 動産を2回移転させる必要があります。
  • 工事期間中は母屋の日照条件に影響を及ぼします。




4. まとめ
以上、3つの案をまとめると下表の通りとなります。
移転工法案 第一案 第二案 第三案
有形的検討
機能的検討 ×
法制的検討
経済的検討
        採用案

 上表から経済的には第一案が、機能的には第三案が合理的だと判断できますが、従前の機能回復を第一優先と考え、第三案を採用しました。第二案では永続的に日照条件に影響を及ぼしますが、第三案では道路工事終了後に日照条件も回復できるため、第三案がより適切な工法であると判断しました。
 機能的な面で低下を及ぼす案は、いかに経済的であっても妥当な工法とは言えません。

 今回の事例では道路工事期間中、土地の一時使用により、残地の一部を使用できなくなることからこのような補償となりました。充分な残地があっても、工事に必要な土地として一時的に残地を借り受ける場合があります。そのような場合には様々な工法が想定されるため、より慎重に工法検討を進めることが必要になってきます。

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