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FileNo. 005
 
 今回の事例は、道路整備事業により支障となる社員寮の移転事例です。社員寮制度を含む福利厚生制度は、近年の経済情勢を背景に縮小対象とされつつあるのも事実です。その様な状況下において今回の社員寮を持つ会社は、社員寮制度を会社経営の重要な要素と捉え、福利厚生施設の維持に努めています。



1.対象の概要

  • 敷地面積 : 約2500u
  • 買収される面積 約800u
  • 残る面積 約1700u
  • 買収される割合 約30%
  • 近隣は閑静な住宅地域
  • 建物の構造用途
    A棟:鉄筋コンクリート造5階建寄宿舎 延床面積約1200u 入居戸数 32戸  
       1階部分は、食堂・浴室・ラウンジコーナー等の共用部分   
       2階〜5階部分は、居室部分
    B棟:鉄筋コンクリート造5階建寄宿舎 延床面積約1000u 入居戸数 48戸
       B棟の各階は全て居室部分となっており、共用部分は渡り廊下を設け
       A棟1階を使用駐車場 管理人専用駐車スペース3台分
  • 支障状況
      建物は、A棟の南側概ね70%が直接支障となる。
  • 当該敷地と勤務先地の関係
      会社の営業概要は、主に企業向け工作機械の製造会社である。
      勤務先となる工場までの距離は、約1kmの近距離にある。
  • 社員寮の状況
      会社の営業概要は、主に企業向け工作機械の製造会社である。
      勤務先となる工場までの距離は、約1kmの近距離にある。


2. 検討のポイント

  1. 建物は2棟存在するが、直接支障となっているのがA棟だけであること。
  2. 2棟の建物は、渡り廊下で接続されているが構造的に分断されているため、単独で解体する事が可能であること。
  3. 建替にさいし、入寮者の一時移転が必要になるが、会社の所有する当該地以外の社員寮を使用する事ができる。
  4. 建築基準法上における用途区分において寮という定義は無く、寄宿舎として位置付けがされている。寄宿舎は、食堂・炊事場・浴室等を共用し、かつ従業員等の特定の利用者を対象としているものである。
    主に該当する規制は、以下の事項です。
  • 建築基準法第35条による、特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準
  • 1000uを超える建築物においては、避難上及び消火上の安全措置が必要
  • 開発指導要綱による、駐車場及び駐輪場の確保
  • 福祉のまちづくり条例による、施設改善 など

3. 考えられる案
<第一案 分割案>

支障となるA棟を構外に移転し、A棟とB棟と独立させて機能の回復を図る工法です。
 
■ 利点
  • B棟を現存のまま残す事が可能である。
  • A棟入居者の移転回数(引越回数)が、一度で完了する。
■ 問題点
  • B棟を現存のまま残す事が可能である。
  • A棟入居者の移転回数(引越回数)が、一度で完了する。


<第二案 A棟集約案>

支障となるA棟を立体集約し、建替を行い、残地内のみで機能回復を図る工法です。
 
■ 利点
  • 第一案と同様、B棟を現存のまま残す事が可能である。
  • 残地内での建替のため、利用形態が従前と同様である。
■ 問題点
  • A棟入居者は、工事期間中に仮住まい先へ移転する必要があるため、二度移転となる。


4. まとめ
 本件の事例は、次の通り第二案が採用となりました。第一案は、食堂・浴室・ラウンジコーナー等の施設が共用できなくなり、また、補償額が高額となります。それに対し、第二案は、従前と同様に共用可能であり、補償額が低額となります。
二つの案の要点を比較表にまとめると、次の様になります。
検討の要素 第一案 分割案
( 不採用 )
第二案 A棟集約案
( 採用 )
引越回数 1回 2回
共用部分(食堂・浴室・ラウンジコーナー等) 新たに設ける必要有り 共用可能
維持管理費 第一案 > 第二案
補償金額





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