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FileNo. 008
  今回の事例は、医療法人が所有する病院施設です。当病院は○○市の市街地中心部に位置し、入院ベッド数222床を有する救急医療指定病院で、24時間の医療態勢をとっており、まさに地域医療の中核を成す病院です。建物は診察病棟、一般病棟の他、職員専用の託児所があります。



1. 対象物件の概要

  • 敷地面積      約5,000u
  • 買収面積      約 130u
  • 残地面積      約4,870u
  • 買収される割合  約3%
  • 建築基準法の用途地域制限
    第一種住居地域
  • 建物の構造用途
    診察病棟:RC造地下1階 地上4階建病院
    一般病棟:RC造2階建病院
    託児所:木造平家建託児所
  • 医療概要
    科目:内科、外科、婦人科、精神科等の8科目
    一日当たりの平均患者数:約250人
    入院患者数: 180人
    救急車輌での搬送:月平均72件

    北側:救急患者搬送口及び夜間外来者出入口
    東側:一般外来者出入口
    南側:一般病棟との連絡出入口
    西側:職員出入口
  • 屋外に設置された機械設備
    受水槽、受変電設備、自家発電設備、給油設備
  • 駐車場の収容台数
    来院用50台
    近隣に60台の職員専用駐車場有り
  • 支障範囲の概要
    建物は託児所が支障になります。現在、託児所では5名の保育士が、22名の幼児の世話を交代で行っており、病院施設の一部として使用されています。建物以外では、救急車輌専用の車寄せ部分と4台分の来院用駐車場が支障になります。尚、車寄せ部分は道路面より約80p高くなっており、救急患者の搬送口は救急車輌の停車位置と同じ高さになっています。


 
2. 検討のポイント
 
  1. 直接支障となる救急車輌の停車位置と4台分の来院用駐車場の機能を残地内で回復するように検討します。
  2. 現在の救急患者の搬送口と計画道路とに約80cmの高低差が生じ、救急患者の搬送口が高くなる事から、救急車輌の停車位置と救急患者の搬送口の変更は、病院の機能低下が伴わないように検討します。
  3. 屋外に設置された機械設備の関連移転が最小になるように検討します。
  4. 病院に休止が伴わない事を前提に、構内での移転を検討します。
  5. 病院と同一敷地内にある職員専用の託児所は、24時間の医療態勢から、休止することなく構内での移転を検討します。
  6. 建築基準法、消防法、医療法、介護保険法等、関係法令に適合するように検討します。(その説明は多種に及ぶため、詳細については省略致します)
3. 考えられる案
<第一案>

現在平家建の託児所を2階建で残地に建築する案です。現在の託児所の南側空地に建築が可能であり、休止が伴いません。又、現在の託児所の跡地に支障となる4台分の来院用駐車場の確保も可能になります。
その移転方法は次の通りです

@平家建託児所の南側空地に2階建の託児所を建築する。
          ↓
A平家建から2階建に託児所の機能を移転させる。
          ↓
B平家建託児所を解体する。
          ↓
C跡地の一部を来院用駐車場にして駐車場の機能回復を図る。

救急車輌の停車位置については、現在と同じ救急患者の搬送口を使用するため、計画道路内(車寄せの跡地)になります。この場合、道路占有の許可を得る事になります。

■利点
  • 託児所と来院用駐車場の機能回復が図れる。
  • 病院に休止が伴わない。
  • 移転対象物件が最小となり経済的に低額となる。
■問題点
  • 救急車輌の停車位置が公道になり、一般車輌の動線と交差し、追突や交通渋滞の原因になり得る。
  • 救急車輌と救急患者の搬送口とに高低差が生じ救急患者の搬送に支障をきたす。

<第二案>

託児所と来院用駐車場の移転方法は第一案と同じです。救急車輌の停車位置は職員出入口の前とし、職員出入口を改造し救急患者の搬送口として使用する案ですが、機械設備(受水槽)に関連移転が生じます。尚、他の場所に代替の機械設備(受水槽)を新設することで、病院を休止することなく、従前の機能が維持できます。

■利点
  • 託児所と来院用駐車場の機能回復が図れる。
  • 病院に休止が伴わない。
  • 救急車輌の停車位置と救急患者の搬送口の機能回復が図れる。
■問題点
  • 機械設備(受水槽)が関連移転となり経済的に高額となる。
<第三案>

託児所と来院用駐車場の移転方法は第一案と同じです。救急車輌の停車位置は連絡出入口の前とし、連絡出入口を救急患者の搬送口として使用する案です。


■利点
  • 託児所と来院用駐車場の機能回復が図れる
  • 病院に休止が伴わない。
  • 第一案と同様に移転対象物件が最小となり経済的である。
■問題点
  • 職員・患者の出入りに、救急車輌の動線が重なり、安全性に欠ける。
  • 救急患者を治療する救急室までの距離が従前より長くなり、救急患者の搬送と職員・患者との動線が重なり機能低下となる。
4. まとめ

現在平家建の託児所を南側空地に2階建で建築することで、託児所の機能休止が避けられます。又、託児所跡地の一部を駐車場にすることにより、来院用駐車場としての機能回復も図れます。
一方、救急車輌の停車位置と救急患者の搬送口の変更については、第一案・第三案とも移転対象が少なく、より経済的ではありますが、救急機能と安全性に看過できない問題が残ります。機械設備(受水槽)の関連移転が伴う第二案は、経済的には高額となりますが、救急医療指定病院の救急機能は、人間の生命に直結していることから、経済合理性なるものより優先されなければなりません。よって本件は、第二案が採用案となりました。
この様に、公共性、緊急性の高い施設の移転については、その業務に休止が伴わないよう検討する事が重要であります。


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