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FileNo. 039
 
 今回の事例は、○○市が施行する道路拡幅事業により、路線バス待機所の敷地が支障となり、合理的な移転方法を検討したケースです。



1.対象の概要

■ 敷地概要
  • 敷地面積 : 約 1,800u
  • 買収面積 : 約  450u
  • 残地面積 : 約 1,350u
  • 取得割合 : 約  25.0%
  • 建築基準法の用途地域制限    
    • 準住居地域
  • 建築基準法の建築制限
    • 建ぺい率  :   60%
    • 容積率    :  200%
    • 防火指定  :  準防火地域
■ 建物の概要 

 建物の構造・用途・面積
構造及び用途 建築面積 延床面積 備考
軽量鉄骨造平家建事務所兼休憩所 260u 260u  非支障


■ 建物と敷地内の使用状況等
  • 当該敷地は、主に路線バスが時間調整を行うための待機所として使用されています。
  • バスはピーク時(AM7:00〜9:00)で12台が待機しています。
  • 上記のピーク時には、駐車や旋回のために、敷地のほぼ全面を使用しており、駐車区画線以外の場所にも駐車し待機しています。
  • バスの出入りは敷地東側の県道より行っています。
  • 軽量鉄骨造建物(以下建物)は、バス会社の事務所及び運転手の休憩所として使用されており、遊休スペースはありません。




2. 検討のポイント

  • 支障となる敷地は、公共交通機関である路線バスの待機所であること。
  • その利用特性から、工事期間中も機能を停止することができないこと。
  • 近隣に同施設を移転できる敷地がないこと。
  • バスの駐車スペースは現状と同等の台数分を確保すること。
  • バスの出入りができる道路は敷地東側の県道のみであること。
  • 建物は支障とならないこと。
  • 建物に遊休スペースがないこと。
尚、今回の施設はその特色から、公共施設であると判断できます。公共施設の補償については、『受託事例No.018』を参照してください。

3. 考えられる案
 上記で述べたとおり、近隣に同施設を移転できる敷地がなく、工事期間中もその機能を停止することは出来ません。従って、残地内において、現状の機能回復が図れる方法を検討していきます。

<第1案>建物は現状のままとし、従前と同等の駐車スペースを確保する

 支障とならない建物は現状のままとし、その他の残地のみで駐車スペースを確保して機能回復を図る案です。

■ 利点
  • 建物の移転が伴いません。
  • 駐車スペースが確保できます。
■ 問題点
  • 出口付近や車路に5台のバスを駐車することとなり、入出庫時の旋回スペースが確保できなくなります。

第1案では、駐車・旋回スペースが喪失し、バスの出入りに支障を来します。

<第2案>建物は現状のままとし、バスの駐車場を立体駐車場(機械式※)とする
支障とならない建物は現状のままとし、12台分のバスを立体駐車場に集約し、機能回復を図る案です。
 
■ 利点
  • 建物の移転が伴いません。
  • 駐車スペースが確保できます。
■ 問題点
  • 機械式の立体駐車場となることから、バスの昇降に時間がかかり、数分単位で出入りする時間帯(AM7:00〜9:00)は、時刻表通りにバスを運行することが困難となります。
  • 補償額が最も高額となります。

※自走式の立体駐車場はバスの重量の関係から、物理的に不可能となります。



第2案でも、バスの出入りに支障を来し、また、補償額も高額となります。

<第3案>建物を照応建物として残地内に再配置し、従前と同等の駐車スペースを確保する
 
 支障とならない建物を、従前に照応する建物(2階建照応建物)として残地内に再配置し、駐車スペースを確保して機能回復を図る案です。建物解体・建築中は、仮設の建物を敷地内に設置することで、機能が停止することはありません。移転の工程は以下の通りです。

@ 駐車区画を一部変更し、敷地内に仮設の建物を建築する。
      ↓
A 建物の解体を行う。
      ↓
B 照応建物を建築する。
      ↓
C 仮設の建物を解体し、駐車区画を変更する
      
 
■ 利点
  • 従前と同様の機能が確保できます。
  • 駐車・旋回スペースが確保できます。
■ 問題点
  • 建物の関連移転が伴います。
  • 補償額が高額となります。


 第3案では、従前の機能回復は図れますが、建物の関連移転が伴うため、補償額が高額となります。

4. まとめ
以上の3案をまとめると以下の通りとなります。
検討項目 第1案 第2案 第3案
有形的合理性
機能的合理性 × ×
経済的合理性 ×
認 定     採用

 今回の場合、支障となるのが公共施設である路線バスの待機所であることや、近隣に同施設を移転できる敷地がなかったこと、また、その機能を停止することが出来ないことなどから、当該敷地を使用しながら、移転の検討をする必要がありました。
 公共補償は、経済性のみならず、従前の機能回復が非常に重要となります。従って、第3案は建物の移転が伴い補償額が高額となりますが、機能的合理性を重視し、採用工法となりました。

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