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FileNo. 016
 
 今回は、道路拡幅事業によりビジネスホテルの来客用駐車スペースが支障となり移転方法を検討したケースです。



1. 対象物件の概要


■ 敷地概要
  • 敷地面積 510u
  • 買収面積 85u
  • 残地面積 425u
  • 取得割合 17%
  • 建築基準法の用途地域制限   
      商業地域
  • 建築基準法の建築制限
     建ぺい率:80%   
     容積率  :400%
     防火指定:防火地域

■ 建物概要
  • 構造用途 :鉄骨造8階建ビジネスホテル
  • 建築面積:330u
  • 延床面積:2530u(容積率対象延床面積 2030u)

■ 駐車場の利用概要
  • 屋外駐車スペース 4台
  • 機械式立体駐車場 26台収容(建物内)

■ 残地面積での建築制限
  • 建ぺい率=425× 80%=340u>330u 適合
  • 容積率 =425×400%=1700u<2030u不適合                



2. 検討のポイント

  1. 支障となるのは屋外駐車スペースであり、建物は直接支障となっていないこと。
  2. 代替となる駐車場の確保が可能か近隣の実態調査を行った結果、土地及び貸駐車場の確保は困難であること。
  3. 屋外駐車スペースは営業用施設として利用されていること。
  4. 買収後は容積率が不適合となり、建物の構造に影響する構造材の変更は現行規定に適合しなければならないこと。
  5. 旅館業法の関係法令に適合すること。(その説明は多種に及ぶため、詳細については省略します。)
3. 考えられる案

 最初に支障となる4台の屋外駐車スペースを残地に確保出来るか検討を行いますが、残地には駐車場を再配置する空地は存在しないため、駐車スペースを確保するには建物を改造(構造材の変更等を伴わない)しなければなりません。
しかし、その前に4台の駐車スペースが営業用施設としての要否の検討が必要です。次に、4台の駐車スペースが喪失した場合の営業継続が可能か否かを、営業規模縮小の判定基準である損益分岐点売上高を算出し、判断する検討も必要です。
<第一案  構内移転工法(営業規模縮小)>
 1ヶ月に渡る駐車場利用実態調査を実施した結果、屋外駐車場の稼働率は100%でありました。また、4台の屋外駐車スペースが喪失した場合の売上高の縮小率は28%になります。(調査内容はFile.no.02に類似のため省略
 この結果により損益分岐点売上高の計算を行った結果、事後における売り上げ予想高が損益分岐点売上高を下回るため、営業の存続ができなくなります。よって、営業規模縮小は採用になりません。(算出内容はFile.no.015に類似のため省略


次に、第二案では、建物の改造(構造材の変更等を伴わない)を行い、屋外駐車スペースの確保が可能か否か検討します。


<第二案  構内移転工法(建物内部を改造>
 建物の間仕切を一部改造し、支障となる4台の屋外駐車スペースを確保する案です。

■利点
  • 支障となる4台の屋外駐車スペースが確保できます。
■問題点
  • 4台の屋外駐車スペースを確保することにより食堂、事務所等が影響を及び大規模な改造となります。
  • 営業休止が生じます。
  • 歩道の切下げ、車の出入りに問題が生じます。

 第二案では支障となる駐車場の確保に限り機能回復を図ったものであり、改造に伴い波及する問題が多岐に及ぶため合理的な工法ではありません。
 次に第三案では、建物の改造は行わず、立体駐車場の機械を改造し、4台の駐車スペースの確保が可能か否か検討します。

<第三案 構内移転工法(機械式立体駐車場改造)>

 立体駐車場の内部機械のみを改造し、4台の屋外駐車スペースを確保する案です。

 専門業者に機械式立体駐車場の改造の可否について調査を依頼した所、現在26台の立体駐車場に4台増床して、30台にするのは不可能であるが、内部機械を全て入れ替えることで、30台駐車可能な機械を設置することは可能であるとの回答を得ました。

■利点
  • 支障となる4台の屋外駐車スペースが確保できます。
  • 営業休止が生じません。
■問題点
  • 工事期間中は駐車場の使用ができません。
  • 駐車場の利用客の減収が生じます。

4. まとめ
 本件は、建物の改造(構造材の変更等)に及ぶことがなく、機能回復が図れる第三案の構内移転工法(機械式立体駐車場改造)が採用案となりました。
今回の事例は、事後に容積率が適合しない建物の移転工法を検討したものです。
 現在は建築基準法(法第86条9)の一部が改正(平成17年6月1日施行)され、公共事業により敷地の一部が減少することで容積率等が不適合となる場合には、容積率関係等の制限規定に適合しない既存不適格建築物として、緩和措置がとられるようになりしました。

尚、同法の運用に際しては起業者と協議が必要となります。


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