1. 対象物件の概要 |
■ 敷地概要
- 敷地面積 1300u
- 買収面積 100u
- 残地面積 1200u
- 取得割合 8%
- 建築基準法の用途地域制限(面積比率)
西側 : 第一種住居地域 (48%)
東側 : 第一種低層住居専用地域 (52%)
当該敷地の用途地域は二つにまたがっており、第一種低層住居専用地域の面積が過半を占めている。建築可能な建物の用途は、第一種低層住居専用地域の制限をうける事となり、その地域は店舗を建築することができない。よって現在は用途規制に反している状況である。
- 建築基準法の建築制限
西側 : 第一種住居地域
建ぺい率 : 60%
容積率 : 200%
防火指定 : 準防火地域
東側 : 第一種低層住居専用地域
建ぺい率 : 40%
容積率 : 80%
防火指定 : なし
■ 建物概要
- 構造用途 : 鉄骨造平家建店舗(ファミリーレストラン)
- 建築面積 : 205u
- 延床面積 : 200u
■ 自動車保管場所の状況
- 来客者用に24台の保管場所が確保され、区画線により区分けされている。
■ 支障状況
- 建物のうち客席の一部分、約20uが支障となる。
- 鉄骨看板等の工作物が支障となる。
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2. 検討のポイント |
- 建物のうち支障となっているのは、客席の一部分であること。
- 残地の大半は駐車場であるが実態調査の結果、駐車台数に余裕があること。
(駐車場実態調査、並びに喪失した場合に、予測される損益分岐点売上高等の検討は省略させて頂きます。 File.no.02,File.no.15参照)
- 建築基準法の用途規制に反していること。詳細については、次項による。
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3. 建築基準法の用途規制について |
前記のとおり、本件建物は現時点において建築基準法の用途規制に反している状況です。
用途規制とは、一定の範囲の地域を用途地域として全12種類に区分し、その区分に応じた用途以外の建物を規制する、いわば住み分けのルールです。本件の場合、建物自体は第一種住居地域内に建築されていますが、敷地のどの位置に建てられているかは、関係ありません。使用される一団の敷地として、判断されます。店舗を建築可能とするには、敷地を第一種住居地域内が過半となるように区分し、敷地をフェンス等で区切る必要があります。
法令に反する建物は、監督官庁によるパトロール等により判明すると、建築基準法の第9条第1項に基づく『違反建築物』として、是正指導の措置が行われます。
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4. 法令に反する建物の損失補償について |
この様な建物に対する損失補償については、要綱及び基準等で具体的に制度化されていませんが、昭和59年5月26日岡山県収用委員会の裁決事例では、その違反を理由に損失補償をしない事は否定できないと採決されています。
本件の判断は、@法令に反する建物の損失補償について具体的に制度化されてなく、A関係人は土地及び建物の所有権を有する被補償者であるため(基準第4条)、B当該建物を通常妥当と認められる移転先に、通常妥当と認められる方法により要する費用を補償する(基準第28条)事としました。
尚、本件の損失補償は上記の判断となりましたが、法令に反する建物の全てが同様の判断となる訳ではありません。違反の程度や、監督官庁による是正指導の有無の状況等をふまえ、起業者との十分な協議が必要となります。
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5. 考えられる案 |
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<第一案>改造工法 |
建物の西側客室部分の柱間1スパン分を東側の厨房側に付け替える改造案です。客席が厨房室をまたぐように二分されてしまうため、躯体を除き内部の改造を行います。用途地域の面積割合は、敷地東側にフェンスを設置し、第一種住居地域が過半となるように区分けします。
■利点
■問題点
- 建物の内部及び屋根を全体に亘り改造する必要があるため、営業休止期間に約4ヶ月を要する。
- フェンスを設けるため、敷地東側部分を使用する事ができない。
- 駐車スペースの2台分が喪失する。(喪失に伴う営業の可否は、損益分岐点売上高を試算し、可能であると判断致しました。)
- 補償額が高額となる。
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<第二案>曳家工法 |
建物を東側に曳く、曳家工法案です。用途地域の面積割合は、第一案と同様です。
■利点
- 建物の内部及び屋根の改造をする事無く、移転が可能である。
- 補償額が低額である。
■問題点
- フェンスを設けるため、敷地東側部分を使用する事ができない。
- 駐車スペースの2台分が喪失する。
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<第三案>照応建物による構内再築工法 |
2階建ての照応建物として再築します。1階部分は、全面ピロティーとする事で、駐車スペース等を確保する事が可能です。用途地域の面積割合は、第一案と同様です。
■利点
■問題点
- 建物を照応建物により再築するため、営業休止期間に約8ヶ月を要する。
- 敷地東側部分を使用する事ができない。
- 補償額が高額となる。
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6. まとめ |
第一案の改造工法は、その範囲が全体に及ぶため休止期間が長期となり、補償額も曳家工法より割高となります。第三案は、照応建物により駐車スペースの確保をしましたが、構外再築工法に残地価格を加算した金額より、また割高となります。
以上から、第二案の曳家工法が採用案となりました。駐車スペースは現状において余裕があり、2台分喪失しても従前の営業を継続することには支障はありません。敷地東側部分の使用が制限される部分については、適法状態にするための措置となりました。 |
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